武ズバッ受講の皆様へ【違憲判決の効力と違憲判断の方法について】

2013年04月26日 14:32

こんにちは、武山です。
 憲法論述講座の採点をしているのですが、違憲判決の効力と、違憲判断の方法を誤解されている方が多いようです。
 これは、詳しく解説しないと分かりにくいと思いますので、ブログで解説します。長文になりますがおつきあいください。

 論述講座を受講されてない方も、この論点を理解する上で有益だと思います。

尚、以下に書いてあることは「理解」すればいいことで「暗記」は必要ありません。「暗記」は、憲法論述講座の論点集で十分です。

1.違憲判決の効力

 効力ですが、2つの考え方があります。
・個別的効力説...違憲判決は、その事件に限って効力を有する
・一般的効力説...違憲判決は、その事件に限らず、一般的に効力を有する

これだけだとわけわかりませんよね、具体例で見ていきましょう。
尊属殺人罪の事例で行きます。尊属を殺した者に、普通殺人より重い刑罰を科す法律が違憲とされたことはみなさんご存じですね?あの法律を題材にしていきます。

例1)Aさんは、親を殺したとして尊属殺人罪で起訴された。しかし、最高裁判所は、尊属殺人罪の規定は、憲法14条1項の法の下の平等に反するとして、尊属殺人罪を違憲無効とし、普通殺人罪を適用した。

個別的効力説だと、この「Aさんの事件限りで、尊属殺人罪は違憲無効」になります。
ということは、

例2)Aさんの裁判の翌日、Bさんが親を殺した。

この例2は、先ほどの例1と「違う事件」ですから、検察官が尊属殺人罪でBさんを起訴することは可能になります。(もちろん、最高裁裁判官が同じメンバーであるなら、再び違憲判決がでるでしょうが)。
しかし、これっていかにも不平等ですよね。なので、個別的効力説を取る人たちは、「国会は速やかに改廃の措置を取り、行政は執行を控えるべきである」なんて言ったりします。

一方、一般的効力説だと、例1の違憲判決は、「一般的に(全ての事件に対し)効力」を有します。ということは、「六法全書から、尊属殺人罪が消えます」。
なので、例2で、Bさんを尊属殺人罪で検察官が起訴したとしても、それは罪にならない事実で起訴したことになり、意味がない、無罪ということになります(罪刑法定主義を思い出して下さい、訴因変更というものもありますがそこは無視で)。

これが、個別的効力説と一般的効力説の違いです。
そして、一般的効力説は、憲法41条によって本来国会しかできない、立法の廃止(=消極的立法)を裁判所がやってしまうことになるので、憲法41条に反します。
従って、通説は個別的効力説を採用するわけです。

では、個別的効力説を採用した上で、次に違憲判断の方法についてみていきましょう。

2、違憲判断の方法~法令違憲と適用違憲
 憲法違反の判断をするとき
・法令違憲...法令そのものが違憲
・適用違憲...法令の適用が違憲
という二つの話があります。これも具体的に見ていかなければわからないので、具体例で考えましょう。

(1)法令違憲

例1)Aさんは、親を殺したとして尊属殺人罪で起訴された。しかし、最高裁判所は、尊属殺人罪の規定は、憲法14条1項の法の下の平等に反するとして、尊属殺人罪という法令を違憲無効とし、普通殺人罪を適用した。

再び例1です。日本の最高裁は尊属殺人罪を法令違憲としています。では法令違憲とはいったい何なのでしょうか?
実は、法令違憲とは、その法令を(裁判官の頭の中でシミュレーションして)どんな事件に適用しても、合憲となり得ないという意味なのです。

例えば
① Aさんが親を殺した行為に尊属殺人罪を科す
② Bさんがひいおじいちゃんを殺した行為に尊属殺人罪を科す
③ Cさんが、自分を虐待した親を殺した行為に尊属殺人罪を科す
④ Dさんが、自分を可愛がってくれた親を殺した行為に尊属殺人罪を科す
 これらは全て、平等原則に反し、違憲です(道義的な差異はありましょうが)。
 つまり、尊属殺人罪は、合憲的に適用できる例が1つもないのです。
 とすれば、尊属殺人罪は、憲法に照らすと、存在する価値がない法律です。なので、法律そのものが違憲(法令違憲)という言い方をするのです。

(2)適用違憲
 では適用違憲とは何なのでしょうか?芦部先生(偉い学者、公務員試験のタネ本と言われている本を書いている)によると3つあります。
①ある法令に合憲的適用と違憲的適用の両方が想定できる場合
②法令の適用を誤り、違憲的に適用した場合
③処分(行政処分など)が違憲の場合

 ここでは、①のみ説明します。

例3)Aさんは、共産党の支持者であった。共産党を支持するビラを配るために、とあるマンションのエントランス部分(鍵はかけられていない)に入ったところ、警察官が弾圧目的で逮捕した。Aさんは住居侵入罪で起訴された。

 この事例で考えましょう。住居侵入罪は、他人の住居に同意なしに立ち入った者を処罰する法律です。
例えば、覗き目的でCさんの家に入ったBさんを起訴することは、何ら違憲ではないでしょう(合憲的適用例)。

しかし、例3で言えば、Aさんにも政治的表現の自由がありますから、Aさんを起訴することは(すなわちAさんに住居侵入罪を適用することは)、憲法21条1項に反する疑いがあるわけです(違憲的適用例)。

 以上の議論より、住居侵入罪の適用には合憲的適用と違憲的適用があります。なので、例3のAさんに適用する限りで違憲ということになります。

 ※実は、この適用違憲とは、法令の一部違憲とも言えます。住居侵入罪のうち、「政治的ビラを配る目的で住居に侵入した者に刑罰を科す」という部分が違憲とも言えるからです。

3、まとめ
 日本の裁判所は、違憲判決の効力について、個別的効力説を取ったうえで、違憲判断の方法については、法令違憲・適用違憲の手法をどちらも認めていると思われます。

※ 法令違憲の例は、尊属殺人重罰規定違憲判決、薬事法違憲判決などです。適用違憲の例は、公務員受験生が触れる機会のあるものはあまりないのですが、猿払事件の一審などが言われています。第三者所有物没収事件は、法令違憲とする見解と適用違憲とする見解の両方があります。

 間違いやすいのですが、個別的効力説と法令違憲の判断は両立します。以上を理解したうえで、論証集を覚えれば、しっかり点数が取れると思います。
 それでは、ラストスパート頑張ってください。

                             東京リーガルマインド専任講師 武山茂樹


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